相続放棄で不動産はどう処分するのか?放棄前後の注意点を解説

相続放棄

金谷 三月三

筆者 金谷 三月三

金谷  三月三(カナヤ  ミツミ)  40代


親や親族が亡くなり、突然「相続」の問題に直面したとき、不動産を含む財産の処分について困る方も多いでしょう。特に、「相続放棄」を検討中の方にとって、うっかり不動産を売却したり管理したりすると、その後に放棄できなくなるリスクが隠れています。この記事では、相続放棄の基本知識から、不動産を含む財産の取り扱い方、注意すべきポイントやよくある失敗例まで、わかりやすく整理します。これから何をすればよいか、知っておきたい方は必見です。

相続放棄とは何か(不動産を含む財産の処分と放棄)

相続放棄とは、被相続人のすべての財産および債務の承継を「一切」拒否する制度です。つまり、プラスの財産もマイナスの財産も全く相続しません。この制度は、借金などの負債が多いと判断される場合に用いられます(専門家による法解釈に基づく)です。

相続放棄を行うには、「相続を知った日」から原則として3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、この期間を「熟慮期間」と呼びます。期限を過ぎてしまうと、法律上「単純承認」とみなされてしまい、すべての財産と債務を承継したとみなされます(専門的には民法第921条第2号に基づきます)です。

特に注意すべきは、不動産を含む財産の「処分」によって、相続放棄ができなくなるケースです。例えば、不動産を売却したり、建物を取り壊す行為、名義変更などは「処分行為」として扱われ、法的には単純承認したと見なされてしまいます。一方で、被相続人名義の土地のゴミを撤去するような「保存行為」については、緊急性が認められる場合には処分とはみなされず、相続放棄が有効に進められる場合があります。

以下は、「相続放棄の申述期限」「処分行為と保存行為」の比較を表にしたものです。

項目内容注意点
申述期限相続を知った日から3か月以内期限を過ぎると単純承認とみなされる
処分行為不動産売却・取り壊し・名義変更など相続放棄が無効になるリスク
保存行為ゴミ撤去など維持・管理目的の行為原則として相続放棄に影響しない

不動産処分による相続放棄への影響と注意点

相続放棄を検討する際、不動産を売却・譲渡・解体などの“処分行為”を行うと、「法定単純承認」とみなされ、相続放棄が無効となる可能性があります。具体的には、不動産の名義変更・所有権移転登記や売却、家屋解体や更地化といった行為は処分行為に該当し、相続放棄の効力を失うことがありますので、十分にご注意ください。 

一方で、不動産の維持や現状に変更を加えない行為(施錠や草木の除去、固定資産税や管理費の支払いなど)は「保存行為」として認められており、相続放棄を継続することが可能です。これらの行為は相続財産の価値保全を目的としており、法的にも処分行為とみなされませんので、相続放棄希望者の場合は、必要最小限の管理として対応できます。 

さらに、民法の改正(2023年4月1日施行)により、「保存義務」は「相続放棄をした時点で不動産を現に占有している場合」に限られることが明確になっています。それ以外の場合には保存義務は生じず、放棄後の管理責任を負わないものとされています。この改正により、適切な理解と対応が可能になりました。 

以下に、処分行為と保存行為の違い、そして保存義務の対象などをまとめた表をご覧ください。

行為の内容 処分/保存の区分 相続放棄への影響
不動産の売却・譲渡・名義変更・解体 処分行為 法定単純承認となり、相続放棄が無効
施錠、雑草除去、管理費・固定資産税の支払い 保存行為 相続放棄に影響なし(必要最小限の管理として許容)
空き家・山林などの未占有財産 放棄した時点で占有していなければ保存義務なし

どうすればいいか(相続放棄を前提とした不動産の取り扱い)

相続放棄を検討している方が、不動産を含む財産を適切に扱うためには、以下の点を心得て対応することが重要です。

心得・対策内容のポイント注意すべきリスク
処分は一切避ける相続放棄前には、不動産を売却・解体・譲渡など「処分」する行為をしてはいけません。処分行為と判断されると、相続を承認したと見なされ、放棄が認められなくなる可能性があります法定単純承認となり、借金など負債も含めて相続するリスクが発生します
相続放棄後の保存義務2023年4月施行の民法改正により、「現に占有している」不動産については、相続放棄後でも「自己の財産と同様の注意」で保存義務を果たす必要があります保存を怠ると損害賠償責任や近隣とのトラブルの原因となります
他の財産も確認し判断慎重に不動産以外にも負債や預貯金など財産がある可能性があるため、放棄を検討する前に全体の財産状況を正確に確認してください放棄した後に不測の財産が見つかり、対応に戸惑う可能性があります

まず、相続放棄前に不動産に手を加えたり処分したりすることは厳禁です。例えば「実家の解体」や「売却」は処分行為とされてしまい、相続を承認したものとされるおそれがあります。

次に、相続放棄後に不動産を「現に占有している」場合は、保存義務が課されます。具体的には、損傷させないことや現状維持のための最低限の対応が義務付けられており、例えば費用負担を伴う屋根の修理などが含まれる場合もあります。これを怠ると、近隣への被害や倒壊による損害賠償責任が生じる可能性があります。

また、相続放棄を検討する際には、不動産だけでなく預貯金や債務など他の財産についても見落としなく確認しましょう。放棄後に思わぬ資産や負債が見つかると、対応に混乱することがあります。

これらの点を踏まえ、相続放棄を前提として不動産と向き合う際には、「処分を避け」、かつ「保存義務がある場合は適切に管理し」、そして「財産全体を把握したうえで慎重に判断する」ことが、結果としてご自身のリスクを最小限にするためのポイントになります。

相続放棄の手続きと不動産への対応まとめ

相続放棄をする際の手続きの流れと、不動産を含む財産への対応について、手続きにかかる費用や専門家への相談のメリットをわかりやすく整理いたします。

項目内容目安の費用
自分で手続き 必要書類(戸籍謄本・住民票除票など)の取得、収入印紙貼付、郵送対応 約3,000~5,000円程度
司法書士に依頼 書類収集・申述書作成を代行 約3~5万円+実費
弁護士に依頼 書類作成・裁判所対応・債権者対応など包括的な支援 約5~10万円+実費

まず、相続放棄手続きを進める流れは次のとおりです。必要書類の収集から家庭裁判所への申述、照会書への返信、そして「相続放棄受理通知書」の受領までをきちんと進めることが重要です。郵送提出も可能ですが、提出先の家庭裁判所が指定する切手等の同封に漏れがないよう、注意深く確認してください。

手続きに必要な費用の目安として、自力で申請する場合は収入印紙(800円)、戸籍類や除票の取得(数百円〜数千円)、郵送切手代などを含めて、概ね3,000~5,000円前後となります。

より安心して進めたい方は、専門家への相談を検討しましょう。司法書士に依頼すると、書類収集や申述準備を代行してもらえ、約3〜5万円の報酬が一般的です。弁護士に依頼すればさらに債権者対応やトラブル解消など、幅広く任せられる安心感があります。費用は5~10万円ほどとなります。

最後に、不動産を含む遺産がある場合に注意すべき点です。相続放棄を検討中は、不動産の処分や譲渡、解体などの処理行為を一切行わないようにしてください。これらの行為は「単純承認」とみなされ、相続放棄が無効になる恐れがあります。放棄の意思が曖昧なまま処分行為を進めると、後々法的に取り戻せないリスクが生じます。

適切な手続きと不動産への対応を通じて、相続放棄を正しく進められるよう、このまとめが最後の注意点となります。

まとめ

相続放棄を考えている場合、不動産を含むあらゆる財産には慎重な扱いが求められます。うっかり処分してしまうと、放棄そのものが無効になるリスクがあるため、まずは何も手を加えず、専門家への相談が重要です。家庭裁判所での手続きや必要書類も事前に把握し、不動産以外の財産にも注意しながら進めましょう。的確な判断ができるよう、焦らず確実に手順を踏むことが大切です。

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